過敏性腸症候群について
Rome III 診断基準
便通異常をきたす機能性障害のひとつに過敏性腸症候群(以下、IBS)があります。
IBSは、器質的疾患がないにも関わらず腹痛や腹部不快を生じさせ、便通異常が伴う機能性消化管障害で、診断基準として、「Rome III 診断基準」が国際的に広く用いられています。
Rome III 診断基準による過敏性腸症候群の診断基準
- 腹痛あるいは腹部不快が,最近3か月の中の1か月につき少なくとも3日以上生じ、
1から3のうち、2つが当てはまる。 - 1.お腹の痛みが、排便によって改善する。
2.お腹が痛くなると、排便頻度の変化で始まる。
3.お腹が痛くなると、便の形が変わる。
◎6か月以上前から症状があり、最近の3か月間は上記の症状を満たす。
◎腹部不快とは痛みとは表現されない不快な感覚を意味する。
便の形状
便の形により、さらに以下の4種類に分類されます。
(1) 便秘型
4回に1回以上は硬便または兎の糞状で、泥状または水様便は4回に1回未満。
(2) 下痢型
4回に1回以上は泥状または水様便で、硬便または兎の糞状は4回に1回未満。
(3) 混合型
4回に1回以上は硬便または兎の糞状で、泥状または水様便が4回に1回以上。
(4) 分類不能
(1)~(4)のどれにも当てはまらないもの。
便の形状はBristol(ブリストル)の便形状スケールで判断します(下図)。
1.コロコロ便 2.硬い便 3.やや硬い便 4.普通便 5.やややわらかい便 6.泥状便 7.水様便
図の出典元:http://cyou-kenko.com/cyou/872/
IBSの日本での発症率
日本においてIBSの有病率を判定するために、全国20歳以上の男女10,000人を対象としてインターネットで大規模に調査を行った結果、IBS全体の有症率は13.1%であり,30代より若い年代に比較的多くみられる傾向があることが示されました。
また、日本のIBSの罹患者数は1200万人と推定されており、男女比は男:女=1:1.6で女性に多くみられ、男性は下痢型が多く、女性では便秘型が多い傾向があるとされています。
参考
齊藤早苗, 嶋大樹, 富田望, 対馬ルリ子, 熊野宏昭 2020『便秘を自覚する成人女性における体験の回避が腹痛および腹満感の頻度に及ぼす影響』(最終閲覧日:2020年11月18日)